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太湖仙島

       太湖仙島は鼈頭渚から2.5キロほどの太湖湖中にある。島は三つの小さな山からなるところから、三山とも呼ばれる。無錫旅情の歌詞に出てくる「さんざん」はこの仙島を指す。
       仙島の面積はわずか2平方キロの小さな島であるが、「三山映碧」と詠われるように緑濃い島である。また、島全体が太湖に浮ぶ姿が、亀に似ているところから、金亀島、あるいは、単に亀島とも呼ばれている。そのほか、伝説の島になぞらえて「蓬莱」（あるいはちょっとへりくだって小蓬莱）と呼ぶこともある。
鼈頭渚の乗船場から、舟に乗って島に着くと、人で一杯だ。すぐ目前に「太湖仙島」と扁額を掲げた大理石の大きな牌坊が出迎える。三門五楼式で、高さが9米、横幅が6米と大きなものである。大理石の太い柱に彫ったいわゆる「双竜戯珠」なる竜の彫刻が荒々しい。すぐその後ろに高さ5米、幅9米の大きな大理石の照壁に浮き彫りにした「玉帝巡天図」があって、観光客の撮影スポットになっている。九竜に引かれた雲車に乗って、図の中心に端座しているのが玉帝ー玉皇大帝である。玉皇大帝は玉皇上帝ともいわれるように道教諸神に君臨し、天地人三界のみならず宇宙万物の興隆衰敗、吉凶禍福を支配する、道教における事実上の最高神で、在外華人を含め多くの漢人から篤く信仰されているのだそうだ。道教本来の最高神は元始天尊（太元）、霊宝天尊（太上道君）、道徳天尊（太上老君）の三柱（三清）である。
       ここから東に向かって、五つのアーチからなる石造りの橋げたに、五つの亭を橋上にもった屋根つきのいわゆる「廊橋」の会仙橋を渡ると、南天門にいたる。ここから先は彼らがいう「仙境」に入る。島に渡って一番最初に出会った牌坊の扁額の裏面には「蓬莱仙境」とあったのを思い出した。ここから先に進むと、まず、摘星亭がある。星を摘る、とは臆面もなく名づけたものだ。ここから石段を登って行くと天街の入り口だ。もう天国か。天香楼、天韻台、天都仙府など発財、無病息災など霊験あらたかな（？）道教の堂宇、神像が次々と現れるが、余り関心を惹かない。湖越しにときに鼈頭渚が遠望されるのが、慰みになる。